【ライター記事】コンビニ勤務時代のセカンドインパクト~Vol.1~【ディノさん】
お疲れ様です。ディノです。
パチンコに関係することを捻り出そうとしましたが、そもそもデビュー作がパチンコと関係ないし、面白ければいいんだよね?と言う開き直りで一つの引き出しを開けることにします。
今回は長く務めたコンビニでの出来事をお話します。宜しければお付き合いくださいませ。
①深夜勤務時代
あれ、ディノさんってパチプロじゃなかった?とコアなファンは突っ込むかもしれませんが、別記事でなぜバイトもしていたかは綴ってますのでご参照下さい。
とはいえ日中はパチンコ稼働の時間に充てていたので(実際、それで生活はしていた)空き時間は深夜しかないな。そんな単純な理由で働き始めました。
不純な動機を付け足すと、昔の深夜バイトはレジで座って本を読むのが仕事で楽できるだろうです。今そんな認識でコンビニ行ったら地獄を見そうですが、当時の私の職場は理想郷でした。
ガッツリ書くと私の聖人像が崩れる恐れがあるので【敢えて】割愛しますが、これぞ天職と言うほどにコンビニバイトライフを楽しみました。(以後、コバラと略します)
勤務自体は楽ですが、深夜のお客さんはクセが強い人が多いんですね。その人たちを相手にするのが1番の仕事と言えたでしょう。酔っ払い相手などは初級です。
②いつも謝る人
まず一人目のご紹介です。お店に入って来るなり、いつも謝る人がいました。よくわからないですよね。でも本当に口に出していつも謝ってるんです。
「あ、はい。スミマセン。なんか来ちゃいました」
ファーストコンタクトから【要注意人物】でロックオンしてましたが、基本謝るだけで買い物も普通にするので私も大目にみていました。
しかしある日、店内に入るなり目をギラつかせて早口言葉のように謝りまくります。
「ごめんなさいね、ほんとなんかいつも来ちゃってこんなになんか買いたいのかな?いっぱい買いたいのかな?」
思わずレジから出て臨戦態勢に入ります。
【謝る人】はコーナーを回って、レジから死角になるカッブ麺の売り場にいきました。
【ドガラシャーン!】
明らかにカップ麺コーナーで何か落ちた音です。
慌ててそちらに行くとそこには、立て膝をついて棚にある商品を両手で搔き出す【謝る人】の姿がありました。(床にばらまいている)
「あー、スミマセン。スミマセン。だめってわかってるのに。私は駄目とわかっているのにー」
言葉と裏腹に商品棚から掻き出すことはやめません。あまりの衝撃に立ち尽くすディノさん。地震後の店内か?と思わす惨状になりました。これは・・・あれだね
【出禁】
③小さな巨人
土曜日深夜1時頃、推定身長145くらい?小柄のおばあちゃんが来店します。自動ドアが空いた瞬間、勝利のVサイン。あまりの堂々っぷりに固まってしまった記憶があります。
長年働いていた相方は、
「はい、いつものね!」
とドリンクコーナーから何やら運んできます。
なるほど、もう常連でツーカーなんだね。私も覚えとかなくちゃね。
運んできたのはオロナミンC。が2本。こちらのお婆ちゃんがこんな時間に飲むの?
会計を済ませたお婆ちゃんは当たり前のように、レジ横のご進物置き場(店の季節品など置く平台)に腰掛け、オロナミンCをグイグイと飲む。そこは座るとこじゃありませんよ。なんて野暮なツッコミは無しだ。
小さな巨人ってフレーズがぴったりでした。このお婆ちゃんにCMオファーくればいいのに。そして2本のオロナミンCを飲み切り、お婆ちゃんは満足げに帰るのでした。会話は無し。
そんな日常が私にも当たり前になったある日、お婆ちゃんはいつものように平台に座り、オロCをいただく。たまに入店するお客さんが、お婆ちゃんに気づかずレジに来て変な奇声をあげたりもしました。
私は平謝りして、お婆ちゃんを見やると何やらおでんを凝視しています。
なんだ?今までオロC以外は気にしてなかったのに新しい反応だな・・・。と私は動向を見守ります。
「これ売ってるの?」
お婆ちゃんの声を聞いたのは初めて。そしておでんは売り物です。
「何か貰おうかしら」
小さいカップに御所望の物を詰め込んでいきます。お婆ちゃんはその様子を不思議そうに見ています。え、おでんってこのコンビニだけの特別な食べ物じゃないよね。
町はずれの屋台のように、お婆ちゃんはレジ横おでん正面に腰掛け(つまり定位置)熱々を頬張りました。・・・よく考えたらこれイートインですね!ウチの店が全国に先駆けたんだなあ。と今になって思います。
これで味を占めたのかお婆ちゃんのルーティンは変わりました。入口でVサインをしなくなり、一直線に最短でまっすぐおでん前にお婆ちゃんは来ます。
はいはい、おでんね。とカップ片手にどれか聞くと、お婆ちゃんは【がんもどき】を指さしました。
最近、お気に入りだもんね。お婆ちゃんはこれと大根が好き。必ず頼んでました。トングでがんもを掴み、カップに入れようとします。
「そのままちょうだい」
ん、なんか言ったか?思わず聞き返す。
「カップいらない、そのままちょうだい」
やはり聞き間違いではなかった。
この熱々のがんもを素手でいきます?
中国4000年、生き字引の方かな?
私はお客様の熱い要望に逆らえず、トングから直接お婆ちゃんに手渡す。初めて体験である。お婆ちゃんはにっこり笑顔でそれを掌で受け取りました。
「あっつ!あつ!あつい!」
突然慌てだすお婆ちゃん。そりゃね、熱いだろうね。想像はしてたけど。
すると次の瞬間お婆ちゃんは妙技を繰り出した。
がんもの乗る掌に、もう片方の掌を振り下ろし、カスタネットのようにがんもを叩き出したのだ。
「パンッ!パンッ!パンッ!」
弾け飛ぶ滴。うん、おでんのダシだ。
「パンッ!パンッ!パンッ!」
なるほど、こうやれば早く冷めるのか。メモっておこう。
深夜1時の人気のない店内に響くがんもの咆哮。私はそれを止めることもできず、ただ立ち尽くすだけでした。
一瞬、鬼の形相となったお婆ちゃんでしたが、いつもの仏様に戻り、がんもをハンバーガーのように両手で頬張るのでした。
続く