【ライター記事】コンビニ勤務時代のセカンドインパクト~vol.2~【ディノさん】
こんにちは、ディノです。
前回からの続き物です。良ければ前章もお読みいただければと存じます。
今回は一緒に働いたクセの強い従業員のお話。いつものクセスゴお客様の2本立てでお送りします。
①アメリカ帰りのヒップホッパー
私のバイト先は駅前でもないし、交通の便が良いとも言えない。パートのおばさんは【陸の孤島】なんて揶揄してたくらいでした。
アルバイトの募集をかけても学校が近いわけでもなし、集まる理由がなく、途方にくれる時間を数ヶ月味わいました。
そんな時、一本の電話
「あのぉー、バイトってぇ、募集してますかぁ?」
ゆったりと独特のイントネーション。鼻にかかった声で問いかける。正直、この瞬間から嫌な予感はしてましたが、喉から手が出るほど切望したバイト募集。丁寧に受け答えし、店のオーナーに繋いだのです。
2日後、彼は面接にやってきました。ダボダボの七分丈ジーンズに腿まである長いTシャツ。頭はターバンみたいなのを巻き、腕にはミサンガを大量に巻いていました。
おおよそ面接に来る格好ではないです。
入店後、相撲のすり足のように、体は小刻みに上下させながら店内を進む。歩き方もヤバいです。彼は深夜希望なので私の相方か・・・。
突然ですが、当店のメリットを上げるとすれば緩いこと。ただ、それは同時にデメリットにもなり得る。つまり完全に現場主義なのです。
オーナーがあれこれ干渉しない代わりに、トラブルも自分達で何とかしろというのです。そもそもオーナーは店にいないです。
然るにこのヒップホッパーを私が一人前に育てなければならない。謎のプレッシャーが私にのしかかります。できるだろうか?話を聞いてくれるだろうか・・・。
迎えた仕事初日。
意外にも勤務態度は良好。こちらの勝手に作り上げたイメージでした。ちゃんと働けます。ただ絶対に走らないけど。喋り方もゆっくりだけど。
「おはようございますぅ」
とある日の仕事前、私は目を疑いました。
リズミカルに体を上下し、入店するその肩には巨大ラジカセ。何それ担いできたの?しかもボリューム大で。
まずは自分を叱ります。なんて脳の回転が私は遅いんだ。とっさの現場に正しい判断が下せないとは・・・。
ディノさんは考えました。とりあえず職場に巨大ラジカセはだめだ!休憩室の空間は限られているのです。
・・・違った、そういう物理の話ではなく。
一般常識だ。モラルだ!マナーだ!
やっと注意できたディノさんを尻目に、彼は不思議そうな顔でラジカセの電源を切ります。どうも私が間違っているようです。
ある時ヒップホッパーは無断欠勤します。
コンビニバイトではよくあるバックレと言うやつです。何度電話しようにも繋がらず。
根性なかったな・・・残念な気持ちとどこか安堵感が混じります。やっぱ癖が強いから!やり辛さはありましたよ。
しかし彼は次の出勤日、普通に来店。
さすがの私も狼狽し、オーナーに助けを求めます。
以下オーナーとの会話。
オ「無断欠勤は駄目だよ、何かあったの?」
ヒップ「友達とサッカーしてましてぇー。華麗にオーバーヘッド決めようとしたらぁ、そのまま頭から落ちて気を失ってましたぁ」
・・・・・・
こ、こいつ真顔で何言ってるんだ?作り話でもマシなのあるだろ。しかし、先にも述べた通りウチには人材の余裕がないのです。
誰もが絶対に嘘をついてると思いましたが、切り出せず次からしっかり出勤するよう釘を刺します。とりあえずこれで様子を見ましょう。
・・・また無断欠勤しました。
このタイプはやり始めると止まらんか。流石にもう来ることはないでしょう。と私も思いましたがとんでもない。
彼は次の出勤日にまたも来店。
一応、彼の弁を聞く。
オ「流石に2回目は見逃せないよ。今度はどうしたの?」
ヒップ「僕ぅ〜、アメリカ帰りなんですけどぉー、ビザの関係で入管に見つかってぇ、拘束されてぇ、連絡取れなかったんすよぉ」
・・・・・・
・・・・・・
流石に他のシフトにも迷惑掛かるので辞めていただいたが、真顔でそんなことを言う人もいます。真偽不明だが仮に本当でも、逆に危ないのでどちらにしても終了です。
②怪しがる人
夏でも長袖を羽織る初老のおばさまが居ました。少し寒がりだった気がします。店内に入る
「寒いわね」
と肩をすぼめていましたから。
ちょっと小太りの、ほっぺが少し垂れて柔らかい印象の方でした。
最初の頃は問題なく、ちょっとした買い物に寄り、他愛のない会話をする。そんな常連さんでした。
そんなおばさま、何がきっかけかわかりませんが、ある時から入店時に目を細めて私を警戒するようになりました。
逆に挙動不審すぎて、こちらが警戒してしまいます。私は何もしてないぞ?ていうかうちの店、なんでこんな人ばかりなんだ。
何も買わずに店内一周して帰るときもあるので、そりゃ怪しいわけです。しかも目を細めて常に警戒してですよ?元々、常連だったし来店頻度も高めです。
来店のたびに考えるんです。私は何かしたか?話をされないほど失礼な態度とったか?そもそもそれならここに寄り付きませんよね・・・。
しかし実際、何も起きず時は進みました。とはいえ会話も無く、気まずい空気だけが流れます。
秋も深まり冬の足音が聞こえる季節になりました。
おばさまはいつものように自動ドアが開き切ってから、こちらを睨みつける態度を取ります。ほんとこうも変わる?ってくらいの変貌でした。
いつものように店内を一周。私と距離を取るため、レジ前には来ません。その間もこちらを常に細目で監視。しかし私も今回は気になることが。
寒くなり、おばさまはちゃんちゃんこを羽織っていたのですが、着膨れと言えないほどにポケットが膨らんでいます。入店時も距離があり確認出来ませんでしたが、これは・・・
バアサンやったな!?
現場は確認してません。しかし流石に声は掛けておきたいと思い、店を出たおばさまを呼び止めます。
警戒モードになってからおばさまは、基本買い物しなくなったんですね。それも私の行動に拍車をかけたのだと思います。
ディノ「あ、こんにちは」
冬の到来を告げる風。ドラマの最後のシーンの様に緊迫感が二人を包みます。枯れ葉多め。
おばさま「何よ」
ディノ「ポケットがすごく膨らんでまして、何が入ってるのかなー?と気になりまして」
おばさまは見て取れるレベルで不機嫌メーターマックス。目が無くなるのでは?というほどに細みがかります。
おばさま「何もないわよ」
声を掛けた以上、もう引き下がれない。ポケットの中を見るだけでいいのです。
おばさま「何もないわよ」
繰り返すおばさま。私はすでに最上位の【疑心暗鬼モード極】にいたのでまずはポケットの外側から中身を感じようとしました。
おばさまは私の手が伸びるのを感知すると、反射的にポケットに手を入れます。
ディノ「こんなに膨らんでいるんだ!」
「何を入れてるんですか!」
おばさま「何もないわよ!そんなに見たきゃ見せてやるわよ!」
おばさまは絶叫します。
そしてポケットの中身を盛大に空に撒きます。
大量の枯れ葉でした。
つづく?